【特別企画】名馬の蹄跡 ライフ・イズ・ビューティフル号(那須トレーニングファーム) 中編

国内障害馬術競技会

全日本チャンピオン

全日本障害飛越選手権は二回走行競技で行われる。各人馬が2回ずつ走行し、総減点(第1走行と第2走行のトータル減点)の少ない人馬が上位となるルールであり、最少総減点の人馬が複数いた場合は、ジャンプ・オフ(優勝決定戦)を実施。ジャンプ・オフの減点と走行タイムによって、勝敗を決する。

第1走行。予選での失敗を繰り返さないよう、慎重な走行に徹した広田思乃&ライフ・イズ・ビューティフル号(那須トレーニングファーム)は、走行タイムこそ一番遅かったものの、きっちり満点走行。減点0でフィニッシュし、小牧加矢太&ガルーファンデスケンメルスベルグ号(北総乗馬クラブ)、草薙達也&クラバット号(座間近代乗馬クラブ)と並ぶ首位タイで第2走行へ進む。

第2走行では、第1走行で減点4だった福島大輔&グラムアー号(STAR HORSES)が唯一クリアラウンド(減点0で走行を終えること)をきめて総減点4に。対して、第1走行で減点0だった3人馬は、広田思乃&ライフ・イズ・ビューティフル号が減点4、小牧加矢太&ガルーファンデスケンメルスベルグ号(北総乗馬クラブ)が2反抗失権、草薙達也&クラバット号(座間近代乗馬クラブ)が減点8でフィニッシュ。以上の結果、広田思乃&ライフ・イズ・ビューティフル号(那須トレーニングファーム)、福島大輔&グラムアー号(STAR HORSES)が総減点4で並び、この2人馬によるジャンプ・オフが行われることになった。

そして、迎えた運命のジャンプ・オフ。先にスタートした福島大輔&グラムアー号(STAR HORSES)は、4つ目の障害と最終障害でバーを落とし、減点8、41.89秒でフィニッシュ。極度の緊張とプレッシャーに襲われていた思乃だったが、この結果で少し気持ちに余裕が生まれ、作戦も固まった。

「ジャンプ・オフのコースは小回りでタイトな設計になっていたので、ブチ君のやる気に任せてスピードを出し過ぎてしまうと、クリアするのは難しいと思いました。それに、福島さんが2落下していたので、多少タイムがかかっても、1落下までなら優勝できる。だから、とにかく大事に乗って、絶対に1落下までで帰ってこようと心に決めました」(思乃)

必勝の決意を胸にスタートを切った人馬は、3つ目のダブル障害で1つバーを落とすも、残りの障害はすべてクリアして、減点4でフィニッシュ。見事に全日本障害飛越選手権初優勝をはたした。ゴールラインを通過した後、思乃は涙でくしゃくしゃになった顔で、ライフ・イズ・ビューティフル号の首を何度も叩き、これでもかというくらい愛馬の奮闘を称えていた。

全日本制覇の喜びを分かち合う広田夫妻

「ブチ君の頑張りに感極まってしまって、ゴールする前からもう泣いていましたね(笑)。私はブチ君と一緒じゃなければ、選手権に出場することもなかったでしょうし、表彰台の一番高いところになんて絶対に立てなかったと思います。試合後には、何度も『ありがとう』と声をかけながら、ひたすらおやつをあげました(笑)」(思乃)

「スウェーデンで馬車を引いていた馬が日本一になった。うまくいかない時期もあったけれど、懸命に努力を重ね、たくさんの人たちに支えられて、大きく花開いた。そして、その鞍上には思乃という最愛の人がいる。あの日の感動は今も忘れられません。言葉にならないくらいの喜びでしたし、『生きてて良かった!』と心から思いました」(龍馬)

こうして、全日本チャンピオンの座についたライフ・イズ・ビューティフル号は、12月のひょうごインドアグランプリ(日本馬術連盟公認4*競技会)で行われたFEIジャンピング・ワールドカップ・三木大会でも2位に入り、思乃のワールドカップ日本予選優勝も確定。名実共に日本代表として、2019年4月に開催されるFEIジャンピング・ワールドカップ・ファイナルに出場することが決まった。

<後編へ続く>